それはないやろう! その3
「スタートレック5/新たなる未知へ」のそれはないやろう。


 スタートレックファンは大きく分けて「カーク」派と「ピカード」派と云う分れ方をする時がある。「やっぱりTOSだよね。」とか「TNGからしか知らない」とか…。まぁどっちしろ狂信的なカークファンでない限り、TOSファンでもST5に関してはなぜか話題に触れまいとする。

 ST5は公開された年のあらゆる映画賞のワースト賞を受賞した。しかも監督は誰あらん、ジェイムス・タイベリアス・ウィリアム・カーク・シャトナーである。拙者のつきあいのあるトレッカーの方々は、一緒にこき下ろして酒の肴にするけれど、「ST5はあかんよな〜」って、なに気に云ってしまったら、ぎろりと睨まれた女性ファンの方がいらっしゃいました。

 「つかみ」って言葉は割と最近になって、TVのバラエティー番組のタレントの用語から一般化した言葉だと思うが、映画におけるこの「つかみ」は非常に重要であろう。スターウォーズの1作目、エピソード番号で云うなら4、つまり30年前に最初に公開されたスターウォーズの影響からか、出端にガーンとかましてがっちり「つかみ」を見舞う作り方は、ヒット作の一つのパターンだと思う。とにかくあの頃雨後のタケノコのように作られたSF映画は、皆一様に巨大宇宙船を広角レンズでどどど〜っと手前から飛ばして来たものだ。

 ではこのST5における「つかみ」の場面は?

 ちょっと話はそれるが同シリーズの最初の映画、スタートレック・モーション・ピクチャー(TMPと略される)の「つかみ」はやはり宇宙船だった。当初TVシリーズの第2弾として予定されていたTMPは、スターウォーズの驚異的ヒットを受け、劇場作品に変更となった。監督は「ウェストサイド物語り」や「サウンド・オブ・ミュージック」等を撮ったロバート・ワイズ。だからなのかこのTMPには延々5分間も役者のセリフが全く無く、宇宙ドックで改装したエンタープライズを映し続ける場面がある。数あるSF映画史上で拙者が一番うっとりする場面だ。こんなシーンは二度と作られる事はないだろう。で、冒頭の「つかみ」のシーンだが、やはり宇宙船の登場から始まる。ロングショットからクローズアップとなり、また遠ざかって行く。さすがにスターウォーズとはちょっと変えてきてる。そしてしばらくの間、地球の言葉は発せられない。他所の星の言葉での会話のシーンはあるけど。そして謎の脅威によってクリンゴン艦隊全滅。インパクトのある異世界へのスムーズな導入の仕方であった。そしてラストシーンはこれから始まる(シリーズ化される)であろう物語へと、お楽しみを繋ぐ終わり方だ。

 で、ST5における「つかみ」の場面なんだけど…

 ファーストシーンでの異星上での場面はまぁよしとして、次のシーンで場面が地球のとある場所に変わる。休暇中の三バカトリオ…じゃない、カーク、スポック、マッコイ御一行様が渓谷でキャンプ、カークは絶壁をフリークライミング。バカカークが崖から落ちてロケットブーツでスポックが助けると、マッコイが憎まれ口。オールドシリーズファンには「たまらない」とは云わないまでもお馴染みのTOSテイスト溢れる場面である。そしてキャンプで野宿。事件が起り一行の休暇は取り止め、非常呼集が掛かり軌道ステーションのエンタープライズへ。ところがそのエンタープライズはまだ工事中で、出航しようとするとあちこちトラブルが起きて、ドタバタ騒動の演出がなされる。

 俺は雄大な宇宙を優雅な宇宙船が駆け抜ける映画が観たかったんだよ。誰がこんなおまぬけ宇宙艦隊のドタバタシーンを期待して劇場に行くかい。おまけにエンディングは中止になったキャンプの続きからである。焚火を囲みキャンプソングを唄いながらエンドロール。数あるSF映画史上で拙者が一番ずっこけた場面だ。「これで終わりかよ?!」何度も我が目を疑ったが終わった。
 
 本編中においても、なんでレナード・ニモイは何にも云わずに黙ってこんな演出に従ってたんだろうと云う場面の連続だ。銀河の中心に赴くというプロットは悪くないし、ST的エッセンスに満ちたイベントが次々と起るのだが、「これで終わりかよ?!」の連続で次から次へと物語は進む。

 前半だったか中盤だったかにカーク様御一行が馬に乗る場面がある。シャトナーは乗馬マニアだ。「ジェネレーションズ」に登場していた馬はシャトナーの馬らしい。まさかこのシーンがやりたくて、このシーンのために他のシーンをついで程度に撮影したんではなかろうか。だったらあの出来でも仕方ないけど…

それはないやろう。
TOPへ    それはないやろうTOPへ   それはないやろうその4へ(準備中)

inserted by FC2 system